2025年初頭、セカンダリーマーケットの流動性が枯渇する中、「ストーリー+エアドロップ」主導型のアルトコイン群でバブルが過酷に崩壊しました。
多くのアルトコインが過去最安値を更新し、一方でビットコインの時価総額ドミナンスは5年ぶりの高水準となる62.1%へ上昇、Altcoin Season Indexは2023年5月に史上最低の4を記録しました。
しかし、Uniswap(UNI)、Aave(AAVE)、Pendle(PENDLE)、Hyperliquid(HYPE)など「ユーティリティトークン」は、市場全体とは逆行して資金を集め、価格とオンチェーン収益の双方が上昇しました。これらのトークンは、実体のある監査可能なプロトコルキャッシュフローを持ち、バイバックや収益分配、ステーキング報酬などを通してトークン保有者に価値が還元される仕組みが共通しています。
本記事では、VCバブル崩壊後の資本流動の構造を解き明かし、4つの注目プロジェクトを事例に「オンチェーンP/E時代」が暗号資産評価のパラダイムをどう変革しているかを検証します。
市場の背景:ナラティブが力を失い、キャッシュフローが希少資源に
- VCの減速:2025年第2四半期、世界の暗号資産分野の資金調達は49.9億米ドルまで急減、前四半期比21%減となり、2020年以来最も低い数字となりました。投資家は「コンセプトだけ」のブームに慎重姿勢を強めています。
- 資本はブルーチップDeFiへ回帰:ビットコインが主導権を維持する一方で、DeFi内での断片化は進行。クローズドループ型「収益一括分配」モデルを持つプロトコルのTVLと取引量は増加を続け、PendleのTVLは7月に55.9億米ドルを突破し、年初来で3倍となりました。
- 評価基準のシフト:伝統的なリスクオフ局面では、投資家は定量化できるキャッシュフローにこそ価値を見出します。
「ユーティリティトークン」とは
定義:プロトコル収益(手数料捕捉)の分配などを通じてトークン保有者が利益をシェアできる、またはバイバック・バーンやステーキング利益分配によって1トークン当たりの「オンチェーンEPS」(証明可能な利益)を間接的に引き上げる仕組みのトークンを指します。
主なモデル
- フィースイッチ/取引手数料の分配:プロトコル手数料を保有者に還元、またはバイバック資金に活用(例:GMX)。
- 貸出スプレッドと清算手数料:スプレッドと清算報酬をトレジャリーに集約し、バイバックを実施(AAVE、Maker)。
- イールドトークン化:将来収益を分割・売買し、各取引ごとにプロトコル手数料を徴収(Pendle)。
- インフラ燃料:高頻度マッチングエンジンの手数料が即時にバイバック・バーンへ(HYPE)。
注目4案件をクイックチェック

分析:キャッシュフローは評価回復をどう牽引するか
Uniswap(UNI)
かつてUNIは「ガバナンストークン」にとどまる存在と位置付けられていました。その後、Uniswap Foundationは総額1億6550万米ドルの大型投資プロジェクトを承認・実行し、用途は以下の通りです。
・開発者プログラム、コアコントリビューター、バリデーター向けに9,540万4,000米ドル
・チーム拡大・ガバナンスツール等運営費用として2,510万米ドル
・流動性インセンティブに4,500万米ドル
現在も$UNIトークンには有効な価値捕捉やバイバック機能が実装されていません。
Aave(AAVE)
Aave DAOは、週に約100万米ドル相当のAAVEをプロトコルの余剰資金でバイバックし、その購入分をDAOトレジャリーでロックする方針を採択しました。
- 導入初週でトークン価格は日中13%上昇、取引量も2倍になりました。
- 貸出スプレッドや清算手数料による安定したキャッシュフローが生み出されており、V3 TVLが前年比32%増であるため、このバイバック策は長期で十分な資金を確保しています。
Pendle(PENDLE)
Pendleは「将来イールド」デリバティブの概念をリアルタイム取引市場に進化させました。
- プロトコルは5%のイールド手数料と5bpsの取引手数料を徴収し、日々監査可能な収入を生み出しています。
- stETH YTイールドが11%超となるなど高利回り戦略が低金利環境に多額の資金を呼び込みました。
Hyperliquid(HYPE)
高頻度マッチングDEXのHyperliquidは、7月にCoreWriterプリコンパイルをリリースし、HyperEVMコントラクトによる注文発注・決済・CLOB連携をオンチェーン手数料バイバック・バーン機構とともに実現しました。
- アップグレード週にはオンチェーンのアクティブアドレス数も取引量も過去最高を記録。
- 即時の価値還元と大規模な高頻度取引手数料により、HYPEはハイベータな「オンチェーンキャッシュフロー」資産となっています。
弱気相場を勝ち抜く三大優位性
- 予測可能なキャッシュフロー:オンチェーンの収益・支出の監査性、DAO意思決定の透明性で情報の非対称性が縮小します。
- バイバック・利益分配ループ:プロトコル収益とトークン価値の連動がスマートコントラクトで自動化され、伝統金融の自社株買いや配当に相当する働きをします。
- 投資家層の拡大:P/SやP/Eといった定量指標で評価の不確実性が減り、マーケットメイクやストラクチャード商品の設計も容易になります。
まとめ
VCナラティブが終息したのち、市場は「証明可能なキャッシュフロー」重視へと再評価を進めています。
ユーティリティトークンは、オンチェーン収益・トークン価値・ガバナンス機能を一体化した存在として、市場サイクルを通じて生き残る希少な資産となっています。
主要DeFiプロトコルがFee Switchやバイバック、余剰分配策を相次ぎ導入する動きは、暗号資産市場の評価モデルがナラティブ主導型からキャッシュフロー主導型へと転換することを示しています。
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